重い荷物は、おろす時だよほら 何だって手に入る | ジャミラ!  

重い荷物は、おろす時だよほら 何だって手に入る

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都合10時間近く寝続けた。加齢とともに寝ることにも体力を要し、10時間も寝ることなど滅多になくなっていたのだが、寝続けた。旅の感覚、ストレスのない世界を取り戻しつつある兆候と思われる。

顔を洗い、身支度をして車でジョエルのレストラン兼ホテルへ。そこで朝食をいただく。アドボと、チョウメン(焼きそば)のようなものと、豚肉と豚の血を何かと一緒に煮込んだ何か。血と聞くと怯みがちだが、味は日本人の口にも合うものであった。

その後、「今晩はカップルの4周年記念ディナーの予約が入ってるから」ということで市場へ買い出しに。何が好きって私は市場が好きだ。もう何もかもが入り混じったにおい。

まずはエビと魚、イカを幾グラムか仕入れ、野菜も少々。わらびに似た山菜もあった。あと小ぶりのジャガイモだと認識して素通りしていた物体が実は果物で、パッションフルーツ位の大きさだが実はライチのような触感で、味はグレープフルーツという実にとっちらかった謎めいたやつもあった。

そしてジョエルが野菜をもう少しと仕入れている隙に、驚くほど身軽な僕は古着屋さんへ足を運び、よれよれのTシャツと短パン、そして原色全開のジャケットやランニング用シューズにソックスを、合計13ドル程度で手に入れた。

一体全体自分は何をあんなに沢山の荷物を持ってきていたのだろう。失った今、無くて困るというものが何一つ無い。「あったらいいな」をベースに荷造りをし、くたびれるほどに旅をしていたが、「あったらいいな」は「なくてもいいや」であることに今更気づいた。旅も終わって随分たったこのタイミングでもって。

そういった意味では某ジェットスターのコンテナ丸ごと積み残し事件に感謝すらしたくなる。ジョエルも僕もご機嫌で市場をあとにし、ホテルへ。ジョエルはこれから仕込みに入るというので、部屋で少し休み、早速仕入れた短パン、Tシャツとシューズを装着し、いざランニングへ。

突然のスコールのために、ビニール袋に小銭とiphone、部屋のカギを詰め込み出発。快い晴れの日だったため、すぐに汗がしたたり落ちてきた。ipodを聴きながら、通り過ぎる人達に
「なんかいる。なんか微笑みながら尋常でない汗を流して走っているハゲがいる」と視線を突き刺されつつ走る。

30分ほど走ったところで速度を落とし、そのまま道沿いのビーチへなだれ込む。なにごとかと怪訝そうに見つめる少年達を尻目に、シャツを脱ぎ捨て海へ。足元は石だらけでお世辞にもリゾート風の素敵なビーチとは言えないが、ランニング後の燃え盛る体を冷ますには充分事足りるものであった。

少し先に、ビーチ沿いのレストランがあったので、コーラでも一杯ひっかけようと行ってみる。

営業されてない。

結果ただ人家に不法侵入しただけとなったので何食わぬ顔で道路まで突き抜け、シューズをはき来た道を戻る。そういえば来る途中に屋台のようなものがあったな、寄ってみよう。

あここだ。あの、何か食べられますか?「・・・・。」

ここ、レストランじゃ・・・「ない。」あは、そうですか。

空手の師範代か何かのように沈黙を貫くおばちゃんに圧倒され、それがただの民家だったのか、屋台的要素はあるものの師範代のご機嫌が悪くいただけなかったのか、真相は闇の中である。

もう少し進んだところに、今度こそ屋台を発見。何か、食べられますか?「うん食べられますよ」何を?「これ。」

刻んだ野菜と、刻んだ何かを炒めただか煮込んだだかしたおかず。うんそれ下さい。

辛い。そしてこの刻んだ何かは、あれだ。

臓物だ。モツだ。

もわーんとお口の奥地で広がるモツのかおり。嫌いじゃないがそこまで好きでもないモツ。
が、空腹は最高のスパイスなので、きちんとたいらげた。

アイスクリーム売りがいたので、それアイスクリーム?と尋ねると、「違うわよ。アイスクランボゥよ。」

高らかに宣言された。アイスクランボゥ。って何。

食べてみます。小さなカップに入った、溶けたかき氷のような物の上に、紫色の粉がまぶされている。とっても化学物質的な色だけれど、いただきまあす。

甘い。が、ココナッツ風味のかき氷だ。その名も、アイスクランボゥ。

今晩はホテルの方に泊まらせてもらえるというので、部屋に戻り、疲れて果てた。

そして夜はウィフィーを堪能しながらジョエルシェフの料理をいただき、閑散期なので従業員全員帰宅で無人のホテルに一人寝た。



夜中の停電で扇風機が止まり、暑くて目を覚まし窓を開け夜風を浴びると、そこには町の中心部とは思えないほどの静寂と満天の星空が広がっていた。


と書くと聞こえがよいが実際は暑すぎて水を浴びて全裸のまま窓際に横たえていた。無人のホテルに独り・・・。