こんなにも身軽にフィリピン | ジャミラ!  

こんなにも身軽にフィリピン

$ジャミラ!  
2010年7月に帰国と相成って以来、幾度となく海外渡航自体は実施されているのだけれど、どれも仕事が絡んでいたり、もしくは仕事が絡んでいたりするものばかりで、それはもう旅の感覚とややズレの生じたもので、腹の底から、仄暗い腹の底からヨッシャとは言えない渡航だったのである。

という「あへー」程度の書き出しから始まるおよそ数年ぶりの旅のレポートを、生々しく現地より貴様勝手にウップして行こうじゃないですか。

夕方18時成田発の、某ジェットスター便でマニラへ向かうのに、昼過ぎまで多摩川でバーベキューをかますというこの心意気、バックパックを背負って多摩川くんだりまで馳せ参じるこの心意気を誰か、まず最初に汲んでおいてほしい。

夥しい量の、焼けた肉と炭と野菜と菌類から発した煙を吸い込んだ衣服を着用したまま、渋谷へ向かい、成田エクスプレスという何やら速い電車を目指す。が、自動券売機の画面操作の方法がよくわからずに不具合が生じ、その電車を逃し、慌てて日暮里経由のスカイライナーでもって16:50に到着。

やはり機内でバーベキューの香りを漂わせるのは、公衆衛生上好ましくないと、仮にもサラリーマンをしている私はチェックインを前にトイレへ駆け込み乗車。着替えを済ませた。うんこも済ませた。

無事にバックパックを預け、搭乗口へ。時間通りに搭乗が開始され、ああそういえば俺はフィリピンに行くのだったとここで認識。

18:00

「皆様、ただいま荷物を大急ぎで積み込んでおりますので少々お待ちください。本日は満席御礼で云々・・」満席であなた共の荷物が多いから手間がかかってるのよとアナウンス。

19:40

「お待たせいたしました。ただいま全てのドアを閉め、離陸に向けた最終チェックを行っております」ドアを閉めるところまで実況中継をしながら場をつなぐアナウンス。ご苦労様。

本来の到着予定時刻は21:40。単純計算で23:00になっちゃったじゃない。
マニラの空港では、昨年家に泊めてあげたアフリカンアメリカンフィリピーノのジョエルという友達、の弟が「JAMIRA」というボードを高らかに掲げて待ってくれている手筈。「JAMIRA」が何者なのかも、果たして人として成り立っているのかも定かでないという不安を抱いたまま弟君は、きっと待ち続けているのだろうと思うと、いたたまれなくなってしまった。

4時間強のフライトを終え、無事マニラに到着。イミグレーションへ向かうと、千人規模の人間が列をなしていて、少しぞっとした。弟君ごめんやでの「ぞっ」

実はその列の九割がフィリピン人列で、外国人列はすかすかだったことに気付くまで十分程かかったこと、何の違和感もなくそのフィリピン人列に続いていたことはこの際弟君ならびにジョエルには黙秘を決め込むことにして、ようやく入国。

驚きなのは、WiFi、愛称ウィフィが飛んでいてジョエルにメールを送ることができ、なんなら巷で話題のFacebookをチェックすることすらできたこと。

ターンテーブルで荷物を受け取る。イミグレで時間かかっちゃったから、もうとっくにどこか置き去りにされてるだろうなあ。と慌てて向かうと、今まさにターンしている最中だった。

間もなくターンしなくなった。

ん?僕のバックパックはあ?

にわかにざわざわし始めるジェットスター利用者。「なんか、コンテナ一個まるごと取り残したらしいよ?」

なんか
コンテナ一個まるごと取り残したらしいよ?


そしてそのざわざわ一行はスタッフのもとへゴキブリよろしく集い、コンテナ一個まるごと取り残された証明、通称遅延証明書を作成してもらうべく、ああでもないこうでもないと言っている。

しばらくその様子をみていたが、スタッフの要領の悪さないし容量の小ささが常軌を逸していたので(一人ずつその場で記入し、記入するさまを何故か一緒に見届け、終わったら遠く離れた場所にパスポートのコピーをとりにいき、戻ってくる。用紙を先にくばっときゃいいんじゃ・・・)、その遅延証明書の入手を諦める。

手元には、ipodとiphoneとラップトップと目薬とリップクリームとカメラ。


電子的!


ようやく出口に飛び出た頃には時計は1:30。21:40にスタンバイしていた弟君・・・いるのか。

いた。疲れ果てた表情で「JAMIRA」と書かれた段ボールを抱え力なく・・・。ごめん!かくかくしかじかでもうこんなに遅れてしまっておまけに荷物ないって。「大丈夫だよ。ジャミも疲れたでしょう」

ええ奴やんか。

タクシーで今宵泊まらせてもらえるというイトコの家へ向かう。二十歳の弟君、ダニエルは大学生なのだが、フィアンセがいて、12日前に赤子をもうけたという。

ええ奴やんか。

イトコの家へ到着。時刻は2:30。中から門扉のカギがかけられていて、電気も消えている。「寝てるのかな。」近隣に響く勢いで門をたたき、

「ケーーーーイジ!!ケイジ!ケーーーーーイジ!!刑事!」

と叫ぶダニエル。反応なし。

「ケイジ!ケエエエーーーーーイジ。刑事!」

一行に反応なし。

20分ほど粘っても誰も出てこないので、意を決したダニエルは防犯用に高く作られた門をよじ登る。あ結構簡単に登れるんだー。防犯の意義

中から開けてくれ、家に入る。お邪魔しまーす。誰もいない。

寝室へ。「んわ!!!」いた。

あまりにも遅いので眠りこけてしまっていたイトコのケイジ。「ごめんね!寝ちゃってました。ジェイムスです。」え?

ケイジ・・・?じゃなくてジェイムス?

刑事ケイジ言うてたよね?誰を呼び立てていたんだろう一体。ジェイムスという名の刑事?もう分からないとにかく疲れ果てました。

シャワーを浴び、着替えはないのでまた同じ服を着て、一応心配なので某ジェットスターに電話する。そしてかくかくしかじかと事の経緯を説明。

「さようでございますか。お調べしますので少々お待ち下さい。」

「お待たせいたしました。残念ながらこちらの記録にはジャミラ様の荷物が保管されているという情報がありません。恐れ入りますが成田空港へお問い合わせください。」あそうですか。

成田空港へ問い合わせる。「さようでございますか。しかしながらそういった検索サービスはこちらでは行っておりません。航空会社さんのほうへお問い合わせください。」あそうですか。


たらいまわしの刑に処された。


この虚無感と国際電話代どうしてくれよう。




こうして僕のフィリピン初日の夜は、明ける手前に更けた。